画家 齋藤芽生の日記


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仮眠景4・衰族館

ひとが心の隙を埋めるためにどうあがくのか、水に閉じ込めて観覧出来る水族館がある。
外部の暗い広がりはあまりにもからっぽだし、光る水槽の硝子面には無駄な反射も映らない。
水中バレエの天女が窒息しながら断続的に泣きと笑いと息継ぎを繰り返していたり、
自分の目に雲霞症のように浮かぶ菊の細部を黙々と紙に刻印し続ける虫がいたり、
光を差されれば差されるほど苦しそうに息を殺すおとなしい月が転がっていたりする。
そういう水槽を集めるだけ集めて、きれいに光る苦しみも集めてじっと見ていたんだけど、
何も入っていない暗いだけのあまりにつまらない水槽を見つけて焦りを覚え、
それが外部の闇と水の中が裏返しになった水槽だと気づき、
同時にそれが他でもない私自身の水槽だということにも気づき、絶望する。
by meo-flowerless | 2013-10-26 12:08 |