画家 齋藤芽生の日記


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よき香りの男

「よきかほり」の男性がいた。今日、電車の中に。
私はあまり男の人が香水をつけているのは好きではないが、その人の匂いは多分自分も付けている香水で、しかも自分とは結構違う薫り方をしているように思えたので、鼻をくんくんさせた。




中央線で、私の座席の際に背を向けて立つ、
結構おおざっぱな感じの若い大柄なサラリーマンだった。
かぐわしいタイプでもなく、色気のある人でもなかった。
しかしその体の回りに、光る赤銅色の、香りのオーラが見えるような気になってきた。
匂いはすごいな。


香水は液体、匂いそのものは、誰しも気体のようにイメージする。
ただ、ある種の調香師に取っての香水の概念そのものは、「立体」だという話をきいたことがある。
各人ごとの皮膚の温度、汗、ph、体臭との絡み合いなどで、含まれている様々な成分が別々の時間、別々の拡散性で揮発される。
時空間がはっきり計算された香水は、つける人ごとに違う香りのカタチを生み出す。

一番皮膚に近いであろうところにムスクがあり、私の鼻はそれを引っ張った。
これを上手に立ち上らせる汗と皮膚は、すばらしい素質を持っている。
その香りの立体造形物は例えてみるなら、
「ムスク、男たる所以、バニラ、蒸し暑さ、砂糖0%のカカオ、若気の至り、巻煙草の箱、なんだかんだ言って高校の時からずっと大事に付き合っている女の肌、多少の蜜蝋、夜吸うガラムの煙、区民図書館の一番古いカーテンの擦り切れた匂い、ほこり、廃校になった栃木辺りの小学校の木造校舎、夜しずかに焚くお香、健やかさ、引っ越したばかりの段ボール、そして汗」
の香り立体だった。

おそらく私もたまに付けるトム・フォードTobacco Vanilleだと思う。
特にこの方からはムスクの柔らかさを感じた。
ムスクはジャコウ鹿&猫の陰部の回りのフェロモンのあれだ。
もしかすると私はメスとして発情期の何かを取り戻しつつあって、
この鼻の鋤鼻器官が男性フェロモンを敏感に察知してるのか?

部屋に帰ってきて大事にしまい込んでいたTobacco Vanilleをつけてみた。
「山羊、ひつじ、干し草、シガレットココアの紙のとこ、料理が下手な人(私)がごまかすために入れるクローヴだのコリアンダーだのかけすぎたスープ、そして汗」
の香り立体が広がったので、私じゃ駄目だ....と思った。
by meo-flowerless | 2010-07-30 00:32 | 匂いと味