画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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修理修繕の丘

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丘の地形には、永遠の憧れがある。
丘のてっぺんを切り崩して出来た東京郊外の団地で幼少期を過ごしたので、印象に残る地形なのは当然だ。
その中でも、ある号棟の裏庭の一角だけを「丘」的な原風景として記憶の中で妙にデフォルメして覚えている。
遠い空、世界から忘却された土地。


何十もある建物の棟。「丘」のあったのは、一街区の12号棟の端だ。
団地をぐるりと一周する円形の道が一番カーブしている場所だった。
そこだけ、同じような棟の角度がわずかに山の反対側に向かって開かれているせいか、空がぽっかり広く見えた。
その号棟の裏庭だけ、少し小高くなっていたのかもしれない。


12号棟にはみほちゃんと言う友達が住んでいた。
髪が昔のパーマネントみたいにもじゃもじゃな、とても可愛いがいま考えれば古めかしい感じの子だった。
仲間うちでおとなしいみほちゃんが特別の存在だったことはなかったが、優しくて波風を立てないので、一緒にいて落ち着いた。

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by meo-flowerless | 2013-10-30 23:42 |

カラーホイルの夜

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絵の中に描きいれる予定の、光るモビールを金のホイル紙で作っている。
雨の音を聞きつつ家に籠ってこういう地道な作業をするのは、幸せだ。
夜に突然絵柄が浮かんで猛烈にホイル紙が欲しくなったのだが、それはさすがに道具入れの中にはなかった。
アルミホイルで代用しようとしたけれど、矢張り小学校教材感のある「カラーホイル折紙」でなくては駄目だと悟り、次の日文具店で買ったのだ。

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by meo-flowerless | 2013-10-29 16:46 | 絵と言葉

仮眠景5・女王蜂

人間には見えない色が、一色多く見えるのだ。
そう科学の本で読んだ気がするので、「蜂」とは一度話してみたかった。
蜂だと言うが、何の変哲もないその辺にいそうな人の顔だ。
天井破るような雨の図書館の一室で対面をしている。
丸顔のまとまった顔で、性別が判別出来ないようなところが、蜂らしいと言えば蜂なのか。


「このような雨の日などは、色が多く見えるといえども、私達の行動範囲は限られるものです」
と様子をうかがうように用心深く蜂は言った。
「具体的に、どんな色が見えるんですか」
どんな色と言われても、人間の色相と前提が違うのだから説明は出来まいと高をくくっていると、
「端的に言えば我々は、『前色』と『後色』とでも言うべきものを、一つの事象について感じることが出来ると言えばいいでしょうか」
と蜂は、意外に答え慣れた学者のように言った。

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by meo-flowerless | 2013-10-27 02:19 |

仮眠景4・衰族館

ひとが心の隙を埋めるためにどうあがくのか、水に閉じ込めて観覧出来る水族館がある。
外部の暗い広がりはあまりにもからっぽだし、光る水槽の硝子面には無駄な反射も映らない。
水中バレエの天女が窒息しながら断続的に泣きと笑いと息継ぎを繰り返していたり、
自分の目に雲霞症のように浮かぶ菊の細部を黙々と紙に刻印し続ける虫がいたり、
光を差されれば差されるほど苦しそうに息を殺すおとなしい月が転がっていたりする。
そういう水槽を集めるだけ集めて、きれいに光る苦しみも集めてじっと見ていたんだけど、
何も入っていない暗いだけのあまりにつまらない水槽を見つけて焦りを覚え、
それが外部の闇と水の中が裏返しになった水槽だと気づき、
同時にそれが他でもない私自身の水槽だということにも気づき、絶望する。
by meo-flowerless | 2013-10-26 12:08 |

仮眠景3・馬の名産地

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自分より年下の従妹なんかいたっけ?という疑問ももちろんある。
それに大宴会場の座敷は、真昼なのに薄暗い蛍光灯をつけているだけで、何の華やかさも無い。
顔もわからない従妹の結婚式というにはあまりに唐突だし、黒い式服の老人たちが胡座をかいて煙草を吸っているだけである。
こんな雰囲気はむかし、焼き場で祖父の骨が焼き上がるまでの間に経験したきりだ。



式場の控え室では、実家からきた母と落ち合った。
驚いたことにあの母が、完全に肩の開いた大胆なイブニングドレスを着ようとしている。
薄紫色で細かいフリルに全身が満ち満ちている。
カーネションで出来たプードル人形のようで、あまりに滑稽なので絶句する。
日頃シックな母のセンスとは思えない。



「ママ何その派手なかっこ」
呟きながら自分が着ようとしているのは、母がいつか縫ってくれた、朱色地に白の孔雀の羽の柄のついたコートドレスだ。
「あらそれじゃあ駄目よ」
と母が逆に驚いた顔をする。結婚式よ?なぜそんなに地味なラインの服を持ってきたの、と、日頃言わないようなことを言う。
「もっと身体にぴったり合った服は無いの?SEIYUでも何でもいいから見てきたら」
スーパーマーケットじゃ話にならん、と思って、控え室を出る。

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by meo-flowerless | 2013-10-20 21:09 |

超絶光速バスツアー

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物凄い風圧と排ガスに自分も布袋みたいにばくばく靡いていた。
空っぽの布袋に透明な光る絵巻がループして貫通していく。
百台ぐらい絡み合った巨大な宇宙シリンダーオルゴールの無数の穴や突起を、延々と自分の頭がギラギラ弾かされていく感じ。
夜の首都高中空を、生身で爆走してきた!


大学の授業で学生を連れて、というよりあの「工場萌え」を世に定着させた大山顕さんに連れられて、この一週間、都市への視覚が激変するような旅をさせてもらった。
集中講義のゲストで大山さんを御呼びしたが、講義も含め二つの都市ツアーは、視覚の切り取り方だけでこんなに高密度の体験が得られるのか、と、圧倒されるものだった。

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by meo-flowerless | 2013-10-13 00:58 |

夜行演習

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水の中の炎のようなこと。そのためにすべての事をしている気がする。
海水に浮かべる花火でも。遠い工場の灯でも。不安定な月にかかる暈でも。
雨の中の産廃処理の炎でも。水面に映り返す赤い信号でも。雑音を裂いて視線が合う一瞬でも。
その絶妙の組み合わせ。
私達を殺しながら生かす。私達を流しながら留める。私達を濡らしながら燃やす。

十九歳の午前三時、目的もなく川やら森やら霊園やらを走り回る友の車で、帰ろうと自分が言ったとき、
「もっと身を任せな」
と友の一人に言われた言葉。それからずっと私の夜がいまだに明けていない。
以来何者かをその夜に一瞬引きずり込もうとする化物がいるが、いつも踏みとどまる。

校外実習。夜行演習。各々の、勝手な青春を遠く見守る。
列のしんがりから楽しい一群れを見つめていた時はそんな気分だったのに、
彼らが折り返してきて引き返す列の先頭に自分がなった時、茫漠と境目のない夜の光の反射に魂抜かれて、矢張りこのまま無責任に、水先案内人の分際で溺れてしまおうかとも考える。
by meo-flowerless | 2013-10-06 05:13 | 日記