画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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カテゴリ:旅( 91 )

蒲郡大悲殿

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凶々しいくらい懐かしいのか、懐かしいから凶々しいのか。
とにかく、探しているのはいつもそういう風景だ。


斜陽はいろんなものたちの影の具合を変える。
平凡な日々の気配が思わぬ暗みに吸い込まれる。
心も、あり得ない落とし穴の奈落に落ちてく。
 

寒風にちぎれるような山頂には、不釣り合いなくらい眩しい西日が燦々と射していた。
背後には巨大な弘法大師像が黙って立つ。
「遠いけどこれからあそこ目指していく。ダイヒデン」
と夫が海沿いの町並みを指した。


愛知は三河、蒲郡。
ガマゴーリという地名の古くささと、逆光の悲劇的な感じのせいなのか、
京都に昔あったというアジール・悲田院のイメージと間違えて、
ダイヒデンは大悲田と書くんだと勝手に想像した。

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by meo-flowerless | 2013-01-04 01:27 |

虚構熱帯温泉

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教員部屋で二度寝をしたら、起きた時には草津宿舎は静寂の中にあった。
学生たちも助手たちも思い思いに自由日の、目的地へとっくに出発したらしい。
パスパスと気の抜けたスリッパを引きずり階下へ下りる。
玄関のテレビの昼ドラを、宿の職員たちがやたら真剣な眼差しで見入っている。


ああ、皆にはぐれてしまった。置いてけぼりをくらって、一人。
でもけっこう嬉しいのは、なぜだろう。
そう。久しぶりの孤独。誰とも会話をしなくていい一人の自由時間だ。
二度目の草津研修旅行引率だが、今日は前と違った眼差しで写真を撮ろうと思い、ボケレンズをつけたカメラを持ち出す。そもそも霧だというのに。

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by meo-flowerless | 2012-07-11 02:45 |

金峯山寺秘仏開帳

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桜に煙る、ではなく、「緑に燃える吉野の山」を訪れた。
トコトコと、短い近鉄電車が山河の中を切り分けて進む。
以前の関西の旅でも思ったが、近鉄電車の車窓風景はどこも、自分の夢の中の迷子感覚に近い風景なのだ。ここは夢で訪れたな、とよく思う。
奈良の山河。
陰鬱な山の緑、青黒い川の反射、やけに縮尺の小さい黒ずんだ木造の家並み。
物憂さと不穏さの先に、痛切な懐かしさが一本貫き通る。



東京でのある日。
電車の中吊り広告で、見たこともない青い肌の鬼神像三体の美しい写真を見た。
どこかの暗い堂内の闇。あやしく壮絶な色彩が浮かび上がる。
アジアのどこかの神々かと一瞬思ったが、まぎれもない日本の仏像らしい。



「金峯山寺」。修験の山奈良・吉野の、国宝級寺院の秘仏開帳だという。
あんな大きな、しかも晴れ晴れとした仏像が日本にもあったなんて知らなかった。
観に行きたけれども吉野は遠し.......と、遠く眺めていた。
が、勤め先の大学で、古美術研修旅行の引率として代理で「奈良に行け」とのお達しが。

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by meo-flowerless | 2012-05-16 03:04 |

野衾たちの温泉 その二

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一体自分は、何を求めて鄙びた温泉に来るのか、自分でも解らない。
理屈ぬきの「感情が必要とする」風景。というのが日本人にはきっと昔からある。
詩や唄は、そんな場所の、闇に落ちる雫の音だった。



闇の匂いのしない闇、というのが存在する。ということを考え始めたのは最近だ。
悲恋の道行を思わせる濡れた夜闇なんか、安易に期待しがちな自分でも、さすがに悟らないといけない。この土地伊香保にもふと感じた、人の心の深淵とはまた違うもの。
おそらくは、あまりに乾き切った社会の黒い孔。
まあ....あまり縁はないたぐいの闇だ。ここで深追いはするまい。

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by meo-flowerless | 2012-02-23 02:39 |

野衾たちの温泉 その一

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有名温泉だからこそ、人の見ようとしない「隙間」が面白いのではないか。
....なんて、淡い期待をつい抱くのである。
湯治にも、美食にもレジャーにもまったく興味のない私ら貧乏チームは、ただ「情景の残滓」のようなものをひたすら求めて歩くだけなのだ。



それでも、なかなかやはり、歯の立たない観光地というのは多い。
マイカーでやってきて、閉ざされた高級旅館やホテルに籠り、一夜の湯とゴロ寝と酒とまんじゅうだけを楽しんで帰って行く....都市の観光客の群れの中。
カメラの向けどころの違う私と相棒は、もう充分に浮いている。



誰もが名を知る、かの伊香保温泉にやってきた。
一泊三千円くらい、素泊まりのこの辺りでは珍しい安宿をお宿に定め、チェックインよりずっと早い朝の内うちから張り切ってやってきた。

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by meo-flowerless | 2012-02-22 03:11 |

貝細工胎内

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学生の頃、何かの雑誌に江ノ島の「貝細工土産」の写真が載っていて、ひどく心ときめいた。
うっすら虹色に光る二枚貝をはめ込んで作られた、孔雀の置物。
どぎついショッキングピンクの染色が施されている。


祭礼や行事に使われる仮設の展示装飾、山車に牽かれるてんこ盛りの人形などを「つくりもの」と呼ぶらしい、ということを民俗学関係の本で知ったころだった。
はかない用途とは裏腹な精巧さを持って作られたもの。買っても埃をかぶる他愛もない土産物の無駄な鮮やかさ。
歴史に残る芸術的価値よりも、そういうどうしようもない器用な徒労の方が心を揺さぶる。そんなことに我ながら気付いた頃でもあった。

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by meo-flowerless | 2012-01-15 21:39 |

雪猿温泉 その二

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地方自治体のサイトや商工会のホームページに、たまに小さなライヴカメラ映像が載っている。
いろんな土地の現在の天気の様子や交通量を淡々と写しているのを、パソコンを通じてみることが出来る。
うちの夫はたまに、黙々とそういう画像を探しては見ている。おそらく何の目的もないのだろうが。



数多在るライヴカメラ映像の中で夫が気に入っているものがあった。地獄谷野猿公苑公式ウェブサイトのライヴ画像だ。
動画ではなく、朝八時から十六時まで、一時間ごとの静止画をクリックして開けるようになっている。画像を開く。日本猿が山峡の露天風呂につかっている。一時間後の写真もやっぱり猿が温泉につかっている。ひたすら一日中入れ替わり立ち替わり....なのかずっと同じ猿なのか解らないが、猿が風呂につかっている。そしてそれを様々な人種入り乱れた観光客が行儀よくまわりに立って眺めているのも、カメラに写っている。

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by meo-flowerless | 2012-01-12 01:00 |

雪猿温泉 その一

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「終着駅、湯田中には午前九時五十一分到着」
特急スノーモンキー号の車掌は、終点、と言わず終着駅、と言った。
昨夜の天気予報では、日本海側には大雪警報が発令されているという。
けっして重くはない光の見える金色の空から、細かい砂塵のように雪が舞い落ちてくる。
白の中、林檎畑の枝だけが風景の底で青黒く絡まり合う蛇のようだ。



はあー 麗しの志賀高原...
湯田中駅に降りた途端駅のホームには、昭和のかなり古い時期の歌謡が流れる。
駅前の温泉郷ゲートの赤文字に一つ一つ丸く雪が積もっている。
数日降り続きっぱなしの雪のせいなのか、ところどころ積雪は50cmほどに達している。
どの軒にも長い槍のような氷柱が下がっている。
こりゃあものすごい日に歓楽にきてしまったようだ。
踏んでも水の沁み出ないまとわりつくような細かい雪は、どこをどう踏んで歩いていいか、解らない。

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by meo-flowerless | 2012-01-12 00:01 |

バリケン君はどこへ

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用事がてら、またしても立川へ。今度は夫と歩きに行く。
立川、昭和記念公園には、再会したいアイツがいるのだ。


数年前の寒い日のことだった。
今でも昭和記念公園と言うとヤツのことばかりが、鮮やかに残る。
人気のない暗い公園の池のほとりに、たった一人でぼうっと佇んでいた孤独なヤツ。
配偶者も子もなく、友もいず、そこに住みついたままひたすら無言の日々を過ごしていたヤツ。
アヒルのような鶏のような七面鳥のような、ガラパゴスの天涯孤独な長生き大亀のようでもある......
........「バリケン」

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by meo-flowerless | 2011-12-26 04:31 |

無為無策散歩・立川

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ひたすら写真を撮る日々。今日は母と立川を歩く。

十代の頃、休日になると母と当てもなく町歩きしたものだ。
立川のデパートの会場のレストランで食事をすると窓から、北の方向に基地の飛行場の広大な荒地が見えた。
あの荒れ果てたとこに行きたいなどと思いつきで私が言っても、母は大抵、いいねといいながら楽しそうに付いてきた。
金網越しに見た基地の枯れ芝の殺風景。そこの光景が、私の原風景の一つになったことは間違いない。


何の目的もないけれど、辿り着くまでに出会う町の様々なディティールに「気付くこと自体」がもう目覚ましい鮮やかなことだった、あの頃。
そんな思春期のまだ瑞々しい心の肌理を思い出しながら歩きたかった。

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by meo-flowerless | 2011-12-24 00:35 |