画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


by meo-flowerless

プロフィールを見る
画像一覧

外部リンク

カテゴリ

全体
絵と言葉



匂いと味



映画
日記
告知
未分類

最新の記事

風景
at 2017-12-16 21:05
ソビエト花葉書
at 2017-12-12 13:07
2017年12月の日記
at 2017-12-02 17:37
2017年11月の日記
at 2017-11-03 23:54
2017年10月の日記
at 2017-10-02 00:56
2017年9月の日記
at 2017-09-06 19:05
珠洲日記1 2017.8.2..
at 2017-09-05 12:52
白玉のブルース
at 2017-08-13 15:27
2017年8月の日記
at 2017-08-08 18:20
2017年8月の夢
at 2017-08-08 01:34

ブログパーツ

以前の記事

2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
more...

画像一覧

2017年5月の日記

2017年5月の日記






5月1日

連休は出張でカンボジア・プノンペンへ。東南アジア各国との交流事業打ち合わせ。荷造りでそわそわしている。はじめての国である。とにかくそわそわそわそわそわそわする。楽しみなだけではなく、心配事や気になることを考え出して神経が高ぶるのを、なんとかしたいのだが。

:::

旅の涙には戻り道がない。この日は二度と無いことを気付く涙だからだ。ちっぽけな自我など何かに呑まれて消える。あらゆるものを喪失しながらあらゆる初めてのものに立ち会わされる。そういう旅のぼう然とした無力感は、カタルシスでもある。
「翼の生えた【もういいや】感」とでもいうのか、海を渡る渡り鳥に感情表現があったらきっと苦笑いで感じているだろう感覚。




5月11日


プノンペンから帰国してつくづく思う。今回はなにごとも無かった、今回は。しかし次は分からないぞ、と思ったほうがいい。東南アジアの街は三、四回行ったくらいでは、決して知ったような気になってはいけないだろう。ましてやプノンペンはやはりどこにいても殺気がある。貧しくとも忙しく蠢き回って生活をしている人たちはパワフルで前向きにも見えるのだが、人々の向こうになにか見えない闇がある気はする。いや闇というより、虚無がある。
食べ物のせいと言うより、やはり緊張でピリピリしていたのか、帰ってからどっと疲れ腹具合も急に悪くなった。



5月12日

「自分探しの」旅、という言葉をやたら嘲笑する人がいる。まあ、ある時期の「自分探し」の盲目的なブームに辟易したのは分からないでも無いが、旅はどうしたって「自分を探す」はめになるものだ、と思っているので、そのことを馬鹿にする理由が私には分からない。
「自分探し」を馬鹿にする人は、本質的に「旅」とは縁遠い人なんだろうと思う。
自分探しの前段階には「自分をとにかく見失ってしまう」という狼狽がある。見失うから探さざるを得なくなるのだ。
慣れない場所や文化の中に飛び込めば、それまで信じ込んでいた自我をいとも簡単に見失ってしまうのだ。それは恥ずかしいことでもなくて、本能のようなものなのだろう。むしろ、見失えないこと、どこの環境に行っても自分のやり方や見方や自我を押し通すこと、結局最終的にはなんらかの精神的優越感と安定感をゴールに据えていること、のほうが、じつは不自然なのではないかと思う。



アイデンティティの把握が永遠に保証されている人間なんていないし、ずっと確固としていると思っているならそれは妄想だ。ずたずたになるまで自己というものが踏みにじられる日が自分に来ないとも限らない。今日の私は明日の私でいるかは分からないのだ。「自分探し」とはじつは、狂気に陥る紙一重のところで踏みとどまるための本能的な闘いにもなりうるかもしれない。仮に全ての言葉を禁じられても人は内省する能力がある。「自分探し」は外向けにアピールすることではなく、誰にも理解されない内省の時間のことだ、と自分では思っている。

 

5月14日

夜の上野公園、青臭いレモンのような香りが立ちこめる。クスノキの花の季節になったのか。闇の中でも洗われるようないい香りだ。大学構内ではまだ匂っていなかった。

:::

Khanh Ly(カーン・リー)の来歴の記事を読んでいて号泣してしまった。素晴らしい歌を歌うベトナムの女性歌手。1960年代からTrịnh Công Sơn(チン・コン・カン)の反戦歌とともに人気を博した。ベトナム南北戦争サイゴン陥落の際に目の前で夫を北軍に銃殺され、その夜中に小さなボートで亡命をして消息を絶った。その後流れ流れてアメリカの難民キャンプに居た処を発見されたとか。故郷に帰ってステージを踏むことを許されたのがやっと2014年だという。
ベトナムもカンボジアも....世界中の国々がどれだけ大国に振り回され蹂躙されて来たか。今も。ビジネス的な視点で日本人がASEAN各国の経済的な伸びしろについて「上から目線」で取りざたしているのなどを読むたびにいつも嫌な気持になる。

:::

どんなジャンルでも1960~1970年代の音楽が好きで、興味がある。
東南アジア、南米、中東、東欧、アフリカなどのガレージサイケの音源などをせっせと集めてコンピレーションにする人は世の中にいて(まあそれも「辺境ロック」という但し書き付きで上から目線には相違ないのだが)そういう音楽を実際聴いてみると様々な感慨が押し寄せる。日本のグループサウンズあたりもその中にまぜて聴いたりもする。世界中が無邪気にロックに憧れ、西欧化しようとし、それぞれの華やかな盛り上がりと創意工夫を見せていた60年代。そしてその後にやってくるそれぞれの国の戦禍とあらゆる文化の破壊、衰退、混乱とのギャップ。
音楽とくに歌というのは視覚文化からよりも、直感的に歴史を読み取れるものだったりするのかも。消費のためではなく、真心と創造性を大事に温存出来ていた時代の音、というのは自分の中で判別出来る気がする。花やかさと暗さと暴力性が緊張感を持って共存していたのは個人的に69年頃の楽曲が多いと勝手に思う。



5月16日
e0066861_15432219.jpg
そのとおり。



5月17日


e0066861_18501149.jpg

仕事の延長で、ちょっと変わった国語辞典・類語辞典を集めているので、神保町へ。久しぶりに「さぼうる」で飯。40cm角くらいしかない最小のテーブルに通され、向かい席にはなぜか店のミカン箱。
かつてよく頼んだバイオレット・フィズなる80年代的飲み物を、久しぶりにまた頼んで飲んだ。すみれの花の味で美味しい。
本は【標語・スローガン辞典】【あいさつ語辞典】.....一周回って味わい深い内容。標語は「朝です 僕です 新聞です」というやつが妙に心に残る。


e0066861_18503319.jpg



5月18日

e0066861_23453255.jpg

様々な辞書の中で特に面白いのは「隠語」「俗語」「集団語」のような、ある特定の業種内のみに伝わる言葉を集めた辞書だ。
『辞書にないことばの辞典』吉崎淳二編は、80年代発売当時かそれ以前の若者語/サラリーマン語、ソープランド語、一般性風俗語、香具師テキ屋語、警察犯罪語、各種業種語などに別れていて、読むだけで幅広く楽しめる。いつの時代の造語なのか分かれば更にいいが、それは記載なし。


警察犯罪用語は、チャカとかタレコミなどのよく知られる言葉以外に、警察に何度も厄介になるゴロツキ達と刑事との妙に近い時空間を感じさせる言葉なども見られる。
またみみっちい窃盗犯罪などに限って細かい職人的技術を表すような言葉が多い。
お世話になりたくはない言葉でも、ある意味、とても味わい深い。



【赤犬】放火のこと。赤い火を犬のように走らせることから 【あひる】制服巡査。ゆっくりと街中を巡邏する様があひるのようだから 【厚化粧】白一色の雪景色で犯行に不利な条件 【伺いに行く】覚醒剤を取りに行くこと 【けつ毛】だまされやすい人。尻毛まで毟られるほど騙されるから 【月夜の蟹】すぐ捕まるドジな犯人 【毒蜘蛛】痴漢 【丼げろ】美味いもの食べたさに自白すること 【にゃん】屋根伝いに忍びこむ泥棒



また70〜80年代と思われる若者語のバカさに、フフンと笑ってしまう。
いつの時代か正確にわからなくとも、これは四畳半フォーク的、これはツッパリ純情ハイスクール的、と時代の匂いはする。まあ、8割が性に関する興味と失態に関する言葉である。



【北千住】野暮ったい男 【オランコリー】恋人がおらんので憂鬱 【ドキュメキス】濃厚なドキュメンタリータッチのキス 【サウンド】よがり声 【ぎざころ】ガラスびんのかけらを使った喧嘩 【学問のするめ】勉強の重圧に押しつぶされた人 【とりのこ族】時代に取り残された人 【うなだれ定食】テーブルに出されて思わず首がうなだれそうな粗末な定食 【メスタルジア】なんとなく女性が恋しくなること 【ポンポンカンパ】友達の中絶費用を集めるカンパ 【ドライもん】ドライで冷たい人 【テンボレス】お先真っ暗、展望がない

何故か「テンボレス」の気持が分かりすぎて吹いてしまった。



5月20日

e0066861_04284731.jpg

大学泊、午前四時。朝の鳥が鳴き始めた。
何をしていたかと言えば、手製の本作りの練習だ。ハードカバーの本を、原稿を揃えて縫い閉じたり表紙の厚紙を切ったりするところからやった。来週学生の前で実演し、作らせるため.....
さすがに難しかった。たった二冊作るのに七時間くらいかかっているではないか。あほか。
けれど、紙質は悪いがカラーコピーで充分楽しめる。
旅先で撮った自分の写真集など簡単に纏めてみた。本のガワはまだ稚拙な技術だけど、中身は結構いい出来のような気がする。
さて!寝よう。


e0066861_04292082.jpg
e0066861_04294744.jpg

5月20日


e0066861_04490465.jpg
またしても朝四時。結局きょうは12時間近く作業してたった二冊、しかも丁寧に作り上げていったハードカバーのほうの1冊を最後の最後で失敗した。原稿も表紙も素晴らしく出来ているのに、その二つを貼り合わせる作業が私にはどーも出来ない。
バカやろー
と絶叫したいが、そんな気力もない夜明け。



e0066861_05435565.jpg
まあ…外身は綺麗だからいいか。


ソフトカバーのほうはまあなんとかできた。安い和紙に刷ったチープ感、文庫サイズ、表紙は浮出し模様のある厚紙に写真をコピーして表面をこすり、わざと剥落させた革みたいな質感。


e0066861_04493096.jpg


::::

e0066861_15214920.jpg

公園で沢山のテントが仮設され、「新潟フェア」をやっている。
極彩色の手毬を売っているテントがあり、心奪われた。ソフトボール大くらいになると花嫁の打掛か帯かと思うほど豪華だ。それで2000円くらいなので手が伸びたが、いつも手毬を見て「いやまてよ、どこに飾るか?」問題にふと行き当たり、手を引っ込める。
今まで何度も手毬には惹かれたが、飾り勝手が今一なモノだ、とつい躊躇してしまう。
しかし長岡の花火をイメージしたという小さい安いやつがあったので、金魚やトキのイメージの鞠とともに買った。二つは家族にあげる。私の分はカバンにでもつけるか….ちょっとでかいか…




5月29日

e0066861_04175244.jpg

土日は、とある温泉街へ。しかしこれも業務であり出張である。
朝のリサーチ中、地元の古老に、自前のカラオケスナック風小屋を見せて頂く。ホッピー22円、うどん3円、焼きそば43円、大間のマグロは時価…という貼紙。
魅かれるが、もう出発のバスが出ちゃう。


一曲歌えば?と古老がスイッチ入れた曲が、朝の山に響き渡る。じゃあ…と一瞬その気になったものの、曲が何故か「メリーさんの羊」だったので、また今度ゆっくり伺います、と礼だけ言って立ち去ることにした。

:::



e0066861_04181664.jpg
上野公園、この時期恒例のツツジ市の、カラになったブースが美しい。

:::


e0066861_04184450.jpg

ここんとこ休みもなく風邪もうつされ、なんとなくむしゃくしゃしがちだったので、休むことにして一日中ネックレスなどをヤケクソで作ってみたが(ガラスパーツや飾金具を組み合わせる)、いくつか良いものも出来た。

by meo-flowerless | 2017-05-05 22:41 | 日記