画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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超絶光速バスツアー

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物凄い風圧と排ガスに自分も布袋みたいにばくばく靡いていた。
空っぽの布袋に透明な光る絵巻がループして貫通していく。
百台ぐらい絡み合った巨大な宇宙シリンダーオルゴールの無数の穴や突起を、延々と自分の頭がギラギラ弾かされていく感じ。
夜の首都高中空を、生身で爆走してきた!


大学の授業で学生を連れて、というよりあの「工場萌え」を世に定着させた大山顕さんに連れられて、この一週間、都市への視覚が激変するような旅をさせてもらった。
集中講義のゲストで大山さんを御呼びしたが、講義も含め二つの都市ツアーは、視覚の切り取り方だけでこんなに高密度の体験が得られるのか、と、圧倒されるものだった。





スカイバスという名称でおなじみの、二階部分がオープンになった観光バスをチャーターした。
宇宙のウズマキ巻のような水天宮前駅の箱崎ジャンクションで集合し、真赤なバスに乗り込む。
水天宮前駅には、殆ど使われていないしんとしたエアポート鉄道への入り口がある。
それも昔から不思議で、憧れていた駅でもある。


このバスツアーの凄いのは、オープンエアであの首都高を爆走する、ただそれだけのツアーだと言うことだ。
大山さんがかつてバス会社に依頼するまでは、殆ど「首都高」を鑑賞するなどという娯楽はあり得なかったと言う。
そうだろうそうだろう。
自分の夢の中では首都高の中空を飛んだりすることは出来ても、そんな視覚や空気感は実現不可能と思っていた。
けど、そうだ、座高の高いものに乗れば、あの光の海の空気を切って、生身で疾走出来るわけだ。


走り出したバスは、巨大な高速道路の柱を今にも擦るばかりのすれすれに、ジェットコースターのように爆走する。
日の丸観光のバスガイドさんも、加速感を煽る名調子のガイドぶり。
「キャーッ」とわかりやすい絶叫が、自分の身から自然に放出する。
風と髪に顔をしたたかか打たれ続けながら、動力に身を任せる。
動力に身を任せてるのだか、光に身を任せてるのだか、轟音に身を任せるのだか、渾然一体の中。
磨き込んだ宇宙苺の種みたいな東京の窓窓の配列に合わせて、肌が粟立つ。


スカイツリー、東京タワー、モノレール、お台場の観覧車。
白い骨のような巨大橋、あらゆる在来線電車の灯、事故現場へ急ぐ救急車。
無数の硝子箱のようなタワーマンション、六本木の底光り、暗い森影。
渋谷付近上下する鉄道構造のスカイライン、青山墓地辺りの涼しい風。
マンションの裏側で喫煙をする蛍族たち、無数の人間が繰り広げる残業の会議。
そして新宿。
これら無数の宝石をあっというまに一時間強で結んでゆく。



ツアー最後は、まるであの世界から現世に滑り込みで引き戻される脱出シュートみたいな大橋ジャンクションを、もうくちゃくちゃに揺らされ、かき乱されながら、高速ですり抜ける。



その数日前には同じく大山さんに連れて行っていただき、川崎工場地帯を船でクルージングしたのだった。
クルーズの、無機物の内蔵奥深くまで映画のように眺めるゆっくりした視覚体験と、今回のジャンクションツアーは、全く別の爪痕を身体に残した。
学生たちは、感動や圧倒とはまた別の感覚で言葉少なになっていた。
何だろう、多分エクスタシーのあとの.....あれだ。


自分は自分で、水面下で進行している実人生の変動にいろんなものを重ねながらいた。


光る蛍光エメラルドの道路標示版を、いくつもいくつもくぐることで。
絡み合う絶妙のジャンクション構造に、何回も貫かれることで。
あっという間に過ぎ去るいくつもの特徴ある街の色を、過ぎ去るままにさせとくことで。
流れ流れていく人生の変化に、翻弄もされながら折り合いを付けていく覚悟も出来ていった。


全部が動いている。止まっているものなんて一つもない。
生きてる限り背負わされる無窮動をこの上なく辛く哀しく感じることもあるけど、こんなに美しいならまあ受け入れていいじゃない、と思った。
by meo-flowerless | 2013-10-13 00:58 |