画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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島日記12

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盆ですね。
早朝から丁寧に飾られた供花の百合が、すぐに焼け焦げたように茶色になっている。
とうの昔にご先祖たちとはぐれてしまったようなおぼつかぬ我が身でも。
他人の海の他人の祖霊を、静かに想う心持になる。




この半島の暮らしでお世話になっているMさん、参加作家のOさん、夫の真徳との、静かな男三人呑み。
これまではただ送り出し、真夜中にへべれけで帰ってきては狭い六畳間に何故か斜めに倒れ寝込む真徳を力づくでまっすぐに移動させる日々だったが、昨夜はなんとなく参加を許された。



夫に言われ廊下の奥の部屋へいざなわれ、仏前に手を合わす。
真徳はどこへ行ってもそういうところがしっかりとしている。
たった一人で朝から晩まで畑をやっているMさんの磨き込まれた家屋に、ひたすら真っ当な日本の夏を思い出す。


盆で故人の魂が帰還する零時まで、しずかな、とりとめのない、けど絶対に後戻りしない三人の男の人生が凝縮された話を横で聞いている。
女の一生なんてぽかっと宇宙に開いた穴みたいだな、と思って聞いている。それで充分だという気もしてにやりとする。


「そうやっていつか死ねるなら、本望ですね」
と何か熱い語りのはてに真徳がいったとき、相変わらず静かな口調で
「いまはそういうふうに言わない方がいい。生きざまがあって死にざまがあるんですから」
とMさんが自然に言った言葉が心に残った。


ひとの一生をどうしても一本の線のように思い描いてしまっていたが、
自分の視野に収まりきるはずのないこの海に方向を見失い、連日の未経験の強い光に茫然とし、
そしていまここで、多くを語りはしないMさんの今まで見てきた世界を想像するだけで、そんな一本の線みたいなヒョロめいた認識が変わる。


真徳は珍しくここでは心から酔えるようで、深夜になってもぼんやり名残惜しそうにしていたが、すっかり席になじんでいたはずのOさんは零時ぴったりにすっと席を立ち潔く帰る。
その感じからまた、自然にOさんの人生を垣間見る気がする。
ずっと年下の私達に対してもいまの立場上後輩として慇懃に接し、いち学生の一人に過ぎない話し方するようでいながら、いつも後味にはちゃんと大人の背中見せて行く人だ。
また、そういう背中を盗み見ようとしている私がいる。


日が変わり魂が帰ってくる。
Mさんと奥さんの二人だけの対面が始まるだろう。


ゆらゆらする真徳を夜道で追い立てながら宿舎に帰る。
また狭い部屋に斜めに倒れ込むのをまっすぐにしてさっさと寝かす。
よし。私はやはりからっぽだ。
久々に思い出した自分のポッカリした空虚に、大満足して自分も寝た。
by meo-flowerless | 2013-08-14 16:40 |