画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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送る桜

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今日は、春の嵐だった。
用もないが、新宿御苑に出かけたら、桜が咲いていた。



ここ数日の朝はまだ氷点下だった。
地元のタクシー運転手がそうぼやいていたが、卒業式後の追出しコンパに朝まで狂乱する学生達の熱につられて、私自身は寒さを感じずにいた。
徹夜で吞み、学生達が三々五々に朝の光の中へ散るのを見届けて、帰宅後は朝から晩まで眠り、更に晩から朝まで寝た。
そんなこんなの今日である。



どうにも言葉にならない虚無感と安堵感が入り交じる、真白な季節。
特別になついていた学生を卒業させる三月も、逆に苦い思いですれ違ってばかりだった学生を送り出したあとの三月も、同じように、抜け殻である。






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新宿御苑では、学生最後の時期、博士論文の下書きを書いていたものだ。
予備校講師のバイトを抜け出し、公園内のベンチを点々とし、文章の断片を捻り出した。



芸大に赴任して今春初めて、同じように論文を書いた直弟子の第一号の博士が、巣立って行った。
自分が公園で必死で拙い文章に明け暮れていた頃には、まさかこんな日が来るとは思わなかった。


青春の値打ちなんて、痛いことの中にしかない。
滅多に感じなくなったのちの人生に、その痛みを懐かしむことができるはずなのだが。
不器用にきしみ、苛立ち、ざらついた砂をぶちまけながら次第に大人の形になって行く学生を毎年毎年見守り続けていると、未だに私も痛みからまったく卒業出来ない。



特に、学部四年の卒業だけではなくその後の大学院や博士を送り出すとなると、彼等はだいたい二十代後半である。大人になる様々な試練を半分知りつつもまだモラトリアムを棄てきれない憂鬱、青黒い陰翳をみな抱えている。
しかも「未決定であることのほろ苦さ」は、芸術を一度でも志した者には一生つきまとうはずだ。
夢追い続けようが、諦めようが。



その苦い砂を噛もうとしない芸術家は、嫌だな。私は。
でもあんまりにニガいよなあ....どうにかならないか....



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どんどん黒雲が立ちこめると、桜も辛夷の花々も白い閃光放つ火花みたいに見えてきた。
けさ天気予報は春雷を予報していた。
御苑に何となくうらうらと吹き寄せられてきた人々は、ほとんどが、女、子供、外国人観光客だ。
まだ三分咲きの寒い桜にあまり大はしゃぎもせず、強風に煽られながら黙々と大木を囲んでいる。



雨粒を感じて立ち去る者もいるが、多くの人が風雨の中でぼんやりと花びらに巻かれて立っていた。
子供が地面の何かを拾い出すと、つられて数人が同じように地面の花びらなどを集めてみたりしている。
花が咲いているのに、華やかさの無い桜だ。どことなく、主役のいないような脇役顔を通行人がしているのは、桜に似合う若い人達をあまり見かけないからだろう。




青年がほとんどいないのは、彼等がこの時期人生の何かを決定することに身を費やしているからだろう。




教え子達も、今更日々を振りかえることもなしに、まだ硬い表情で次の土地への旅支度をしていることだろう。
でもなあ、あんたたちに取って私は年を食った先生にしか見えないだろうけど、私もまだ青年と言えば青年なんだぜ.....
同じように悶々としながら、人生の次の光景への旅支度を、しているのだ。


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by meo-flowerless | 2012-03-28 23:47 | 日記