画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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バリケン君はどこへ

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用事がてら、またしても立川へ。今度は夫と歩きに行く。
立川、昭和記念公園には、再会したいアイツがいるのだ。


数年前の寒い日のことだった。
今でも昭和記念公園と言うとヤツのことばかりが、鮮やかに残る。
人気のない暗い公園の池のほとりに、たった一人でぼうっと佇んでいた孤独なヤツ。
配偶者も子もなく、友もいず、そこに住みついたままひたすら無言の日々を過ごしていたヤツ。
アヒルのような鶏のような七面鳥のような、ガラパゴスの天涯孤独な長生き大亀のようでもある......
........「バリケン」





白黒斑の、ちょっと毛長のアヒルを想像してほしい。
そして顔のところのみ、鶏のように赤いうろこ質の、ヘンな鳥。
「何だあの変な鳥?」と言われる率トップ3には常に入りそうなシュールな家禽。
たった一匹、昭和記念公園にいたのだった。


出会ったときは何の鳥かも解らず、
きっとこいつは鶏と七面鳥の密愛の間に生まれてしまった子なのだとか、
いやアヒルの派手な変種なのだとか、思った。


「もうさすがに何年も立つから、いるかどうか...」と夫は懸念しつつも、
もう風景やらイルミネーション祭りやらそっちのけでバリケンを探すことしか頭にない。
いろんなものを撮影して歩く私と、どんどん距離が出て、遥か遠くを急いでいる。


夕暮れ時、もう閉園間近で誰からも見放された枯れた風景の中、
ヨチヨチと茂みから出てきて水を眺めていた、味のある風貌を私も忘れられない。



「なんだおまえ、さみしいのか?」
「........」
「おまえ、ひとりぼっちなの?」
「........」
「仲間はいないのか?」
「........」
「こんなところで何してんの?おなか減ったのか?」
「........」
何を尋ねても、クェともピーとも答えず無言で水を眺めていたっけ。まあ、当たり前だが。


その日帰宅してネットで情報を調べてみると、やはりいつからか一匹ぽっちで公園に住みついた鳥らしかった。


歩いても歩いても遠景との距離縮まらない公園内に、夕刻開始のイルミネーションフェスのセットが点在している。
人工的な芝生の丘にイルミの白熊やペンギンが、寂しげに片手を挙げて佇んでいる。
広いので沢山いる気はしないが、よく考えるとかなりの数のカップルが蠢いている。
クリスマスデートという訳か。
よく考えれば、うちらもクリスマスデートだ。ただし、バリケン見物にな....


サンタの扮装を頭から足までした青年が、彼女のご機嫌をとってはしゃいでいる。
夢のような芝生の真中のミニチュア一軒家では夫婦が子供を遊ばせる。
ようやく件の池の畔まで出た。
湖面には沢山のカップル乗せボートが浮かぶ。
金色のすすきの茂みの合間にバリケンを探すが、やはり出てきてくれない。
池の中之島によく見るとまた別の嘴の大きな、そいつも充分に孤独そうな灰色の鳥がじっとしているのが見える。



池のまわりを一周する。
枯草の中でこの上なく幸せそうに丸まる、何か一回り大きい赤猫二匹に出会うが、バリケンはいない。
「なあおまえ、バリケン知らないかい?」
と夫が猫に訊いている。
素知らぬ顔で居るこの猫がもしかしたらバリケンに悪戯して...などと私は想像する。



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先程のサンタ男と彼女が、ベンチでいいムードになっているところに出っくわした。
ちょうどそこへ、レフ版持った撮影隊とサンタ服のモデルがやってきて、いいムードをぶちこわしながら撮影を始める。



一時間ほど歩き回って、日も暮れてきた。


バリケンはとうとう、どの茂みにも見当たらなかった。
やはり歳月もたったし、死んでしまったのかもしれない。
寝ているだけかなあ.....でも、どうも居る気がしないのだ。
帰る私達とすれ違うように、イルミ祭り目当てのカップルや家族が続々と園内に集まり始める。



犬の品評会かと思うほど沢山の種類の犬が散歩させられている。
女子便所に入ると、白黒のでかい犬を連れた老婦人が無理矢理個室に自分と一緒に犬を引きずり込んでいた。
外で待たせるのがいやなのか。個室の中に一緒に閉じ込められ婦人が用を足す間ずっとキューキュー困って泣いていた。



園を出てもまだゲートまわりには広大な芝生が広がっている。どこからどこまでが公園か解らない。
フェルトの草色の広がりの中、ピンのような人々がポツポツ、球技やフリスビーや、西欧的エクササイズにいそしんでいる。
中高年サークル的群れが皆、丘の上で一斉に同じ方角を望み、カメラを構えている。
金色の複雑な雲間から富士のシルエットが現れる瞬間を逃さないように、皆で待っているらしい。


丘からはエレベーターでグラウンドに降り、
ジオラマを手中にしているような非現実的な芝生地面の中に自分たちも滑り込み、
広大な敷地を横切って、基地址を出た。


少し見ない間に変わったのか、それともクリスマスだから人が多かったのか、
以前訪れた印象,誰からも忘れられたような暗い森。
あの風情は今はあまりなく、恋人や家族の為の休日野原に整備された公園では、
あの孤独なバリケンも居づらかったかもしれない。
それとも誰かがクリスマスの七面鳥と間違えて捕獲して食べてしまったのか。
なんて考えれば考えるほど、哀愁のクリスマスになってしまった......


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by meo-flowerless | 2011-12-26 04:31 |