画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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無為無策旅行・児島

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正午を回り、太陽はいよいよ激しく照りつける。岡山から児島へ。本州と四国との境界の町である。
乗り込んだマリンライナーには沢山の高校生や主婦が、坂出や高松など四国の町々へ帰るために乗り込んでいる。
自分にとっては遠い遠い、眩しい憧れの四国だったが、いとも簡単に、まるで毎日の通勤のようにそこへ向う電車に黙々と立って揺られている、違和感。



しかし海は渡らない。
岡山側の極地、児島駅からはレンタサイクルを借りる。






昨年旅をした真夏の気仙沼では、自転車の速度と風を切る涼しさが暑さから身を守ってくれたので、今回も自転車ならばバテないような気がしている。


駅から少し離れたところにどうやら商業地域らしき一角があるが、ここも閑散としている。
石畳の明るい色のせいか、白い建物が多いのか。地中海の町、という感じがする。



児島はジーンズの聖地ともいわれていて、デニムの縫製製造業が盛んらしい。
瀬戸内地中海色の午後。料理屋もひっそりと料理を忘れているかのようだ。


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どこからか聞こえて来るのはジャズかロックかファドか。まかり間違えば洒落たカフェなどポツンとありそうで居て、やはり無い。
庶民的な喫茶店「はにわ」には、料理は無かったので、昼飯には結局ありつけずミックスジュースで喉を潤す。その一口が、凍らした水蜜桃を丸呑みしたように美味しい。


クラシックで重厚な石の建築の中をリフォームし、入口に板きれや石や廃硝子などをアルテ・ポーヴェラ風かつ無造作風にインスタレーションしている古道具屋がある。
敢えてわざと涸れた、上級の洒落者にしか解らぬセンス。
何だこの空気は。
ものすごく高精度の静止映像、密度の高い無音の中に閉じ込められた空間を、パノラマ的にゆっくり360度カメラアイが見回すような感じで、茫然と眺める。。
なぜ、この町に.....と言ってはこの町に悪いが、東京のスノッブな裏通りにあってもおかしくないような。


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用途不明の幾多の硝子器具が整然と並べられた大掛かりな古い家具。どこでどう汚れたのか、様々な大きさの無造作系の板。
異国の船舶用品、飾り気の無いヨーロッパ製の生活具。今は誰のためにもならない立派な縫製用具。


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店の奥、無精髭の若者が、ゆっくりと家具の直しかなにかをしながら、執拗に低いBGM的口笛を繰り返しているのが、シュール系映画のジトーッと長回しのフィルムの中に居るような気にさせる。
スタッフには数人の美術系臭のする男性が居る気配。
どうしてこの町のこの場所を選んで店を開いたのか聞いても見たいが、聞かないでももう解っているような。
私の、いや特に我が相棒の、暗黙の鉄則のようなものがある。どんなに素敵な店でも店主のセレクトが厳しいショップでは、買わない、買えない。手を触れてはいけないような気がしてしまう。



親友のちひろに紅い大きな針山を買って帰るか迷ったが、いや彼はもっとじぶんにあったものを自力で見つけるだろうな、と思い、やめてしまった。



裏口のガラス戸から漏れる光の中には、ざっと布のロールに巻かれた骸骨一つ。
素敵じゃないか。でも、自分には御縁が無いのかも、と思って、店を出る。



町中日向に干した布団の匂いがするような中、相棒は紋白蝶のように遥か先をひらひら好きなように飛び回り、写真を撮って歩く。
いぶかしそうに店内から出て来る店の主や奥に引っ込んでいたはずの老人が、そっと硝子戸を開けて通りを伺うとき、ちょうど私がそこを通りがかり、目が合って、ばつが悪い。



この日はもう三カ所の町を回っていて、どこも静まり返った鄙びた町ではあるが、こうも色合いや匂いが、いやそれぞれが背負っているであろう物語の気配が違うというのに、驚く。



昼飯も済まさず、私達の自転車は児島半島の先、下津井の集落まで半ば強引に向っていく。
by meo-flowerless | 2011-08-23 01:38 |