画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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動揺

数日茫然とテレビばかり見ていた。
気仙沼、釜石、吉里吉里。これから絵に描こうとしていた土地の写真資料は、まさに、昨夏に訪れた三陸海岸の美しい風景たちだった。
全ての人々の営みも、海も、緑も、跡形も無い。
町のあの人たちはどこに行ったのか、無事なのか、友の家族は無事か。内陸部だが、暫く親類とも連絡つかず。




出来もしないのに、訪れた町の消息をむなしくネット上で収集しては、東京で無責任にやっているこんな行為も電気の無駄遣いになるのだ、とやめる。
義援金に募金する、節電に協力する......茫然としながら今やれることをするだけ。自分が何者で、何ができて何がすべきかなど、いくら焦っても思いつかない。

勤め先の大学の校舎は茨城にあり学生も多くそこに住む。様子を見に行かなければならないが、日々原発の状況は深刻になる。
朝からパニック気味の母が、貴方だけでも九州に退避しなさいとジャンジャン電話をかけてくる。悲愴感すら漂う。
日に二回の計画停電に備え、冷蔵庫のものを解凍しながら作り置きの飯を作るのに追われる。停電時は水もこない。しかしそんな飯の時間に罪悪感や哀しみを感じる。
スーパーにいくたびに自分が略奪人であるかのように思いつつ、余震に戦き、やはり備えが欲しいと品薄の家電屋に走ったりする。
都心に所用に出るため電車に乗り込むと、他人の読む新聞の見出しには大きく、放射能汚染絶望論的文字。
東京駅に近づくに連れ、このまま何もかも棄て西に逃げようという強烈な思いに駆られる。

被災地以外の、多くの国民が右往左往しているのと全く同じような狼狽ぶりで、数日勝手に混乱していた。


が、昨日、画廊にゆき、心をリセットする。高砂さんにも、一人の人間としてちゃんと腹をくくるように、勇気づけられる。
私の作品集の出版のために非常時下でも集まって下さる出版社の方、編集者の方、画廊の方、間に立って下さる方々に、本当に感謝する。
初夏の出版に向け、多いに編集会議。三人の方々のプランのプレゼンの良点を、なんとか一つのリズムと流れでもってまとめられないか考える。
本の出版にあわせ、画廊での二期に渡る個展と、できることならネット上でのある作品の展開を今は願っている。
些細な貢献ではあるかもしれないが、長期的にこれから続く救済と復興のため、何らかの義援に繋がるようなもののつくりかたもしようと思う。
ここ数日動揺の中で浮かんでいた「逃散」の文字は消え、再始動し始める。

勤め先の大学の卒業式も謝恩会も中止だ。昨日の都心も閑散としたゴーストタウンのようだった。
目に見えない恐怖からの脱出感、鎮魂の自粛感、灯を暗くして保身に走る貯蔵感、それらが入り交じった虫食いの穴のような、都心の風景。
でもこのままでは、支える側のはずが、助けられるべき被災者より先に弊れしてしまう。
生命の危機にある時に力の限り生存に向かって脱出することと同時に、どこのどの場所にいたとしても宿命から逃げも隠れもしないという覚悟、どちらも生きるということなのだ。
生きている以上、あらゆる限りを尽くし生きなきゃ行けないのだと心を入れ替えた。

実は正直、この今の時期に、「アーティストとして」何ができるかなどという、立場としての体制作りとか声高に声明をあげたりすることが、私には全く思いも浮かばなかった。
無力感と焦燥感で芸術とやらの何もかも忘れた。心の筆はおそらく一度折れた。それほど震えた。
でも我に返ると私の身体はここにこうして無事である。そのことに改めてはっとする。
とにかく今は手も言葉もフルに動かしてとりあえず、ひとりの人間として自分のやるべきこと、できることを思いつく限り全部していくしかない。
by meo-flowerless | 2011-03-19 11:22 | 日記