画家 齋藤芽生の日記 Twitter/ @meosaito


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浅草潜伏 二日目

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ビジネスホテルで目覚めたときにはもう日も高く、
計画中の作品が絶対に仕上がらないのであきらめる、という悪夢をひきずっていた。
昨夜は縊死体を三回も見るという悪夢だった。
吐気と腹痛でしばらく起きれない。
昨日の暑気でもう内臓が弱っている。
それでも重い足を引きずりカッパ橋まで出る。




カッパ橋では、青い貝の菓子型や、弁当飾りのミニ唐傘、
小さな点滅型卓上呼び込み機、ウェディングケーキに使う小さなエンタシスの柱など買った。

骨董屋に居座り、マッチラベルの見本帳、外人ヌードトランプ、日本髪の取れた女の陶器の置物も買った。すべて作品に使うため。
骨董屋の入っているビル入口の自販機で瓶のフルーツ牛乳を飲んだ。


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顔を黒焦げにさせそうな暑気に目もあけられなくなり、
息も弱くなって、これは熱中症にかかりかかっていると気付き、
よたよたと六区のカラオケ屋に倒れこんだ。


やたら広いパーティールームに放り込まれ、
薄汚れた真昼のボックスのソファでしばし横たわった。
具合悪い。目が良く開かないし腹が下る。体も震えてる。
相当浮遊感のある最近の生活に慣れきっていても、
具合の悪いときだけ悲しくなる。
天井だけをしばらく見て、涙も無く泣く。
滞在三時間のうち一時間はちゃんと歌う。

夕方ころからまた裏浅草を徘徊し、映像と写真を撮る。
この界隈はなぜか朝も晩も、人の気配ない街角にふっと女の香水の香ることがある。
今まで感じた香水はみな違う際立った香りだった。
丸の内の女には無い懐かしい色香の。

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喫茶ジョイ。
香具師業らしい哀川翔みたいな黒スーツの男が大声で電話している。
やっちゃ場、大阪、うちの若い衆、清水のアニキ、
パイン味はものすごくおいしい、製氷機、・・・そんな会話。
気付いたら私はもの静かなウエイター老人に『鉄板焼きそば』注文していた。
香具師の影響だろう。

気分変え夜の千束通りを歩いてみた。
ぐっと増す庶民感、行き過ぎる自転車の親子連れ、元気な老人。
小料理屋、雀荘、惣菜屋、あけっぴろげの町の人の姿を、
できる限りの隠し撮り感覚で映像に収めて過ぎる。

小学校で盆踊りやっていた。
祭りの輪に入れない労務者らしい男の人たちと一緒に遠くから見ていた。

アイスを食べながら浅草に戻る。
しばらく夜の花やしきのネオンを見ていた。
昼間よりも客層が大人らしい。
花のような光。
機械の摩擦音が波音のようで、歓声が海辺のことのように思える。
ずっと遊園地の周りをうろつき、
機会から流れる波しぶきのような、嵐のような轟音が天にこだまするのを聞いていた。

深夜また訳も無くカラオケボックスに一人入る。
歌いたいと言うわけでもない無感情。
迷子にとってカラオケボックスは保育器みたいに安全で、
まわりと遮断してくれる気がするせいか。
誰のためにでも無く私は歌い、孤独は保育器の中で順調に育つ。

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私がどこの誰で何者なのか、が、だんだん失せてゆく。
自分のしていることの意味もわからない。
悲しいほど糸の切れた風船で、
この寄る辺ない街の中でも、際立って得体の知れない徘徊者だ、私は。


未来の夢も過去の拘泥も、私から無くなり果ててる。
身が涼しく感じるほど、肌寒く自由である。
誰からも忘れられている。
カラオケには一人で、三日に四回いった。
喫茶店には五回入った。
誰のことも忘れている。
浅草だけが目の前にある。

無軌道。
このままだといつかぷっと死ぬような気さえする。
でも、なぜかいつもよりもずっと、生きている。
by meo-flowerless | 2010-07-21 23:46 |